フィンチのお気持ち表明板

ブログと日記の狭間

12月25日

メリー・クリスマス!

 

ヴァリツフ通りのアパートメントに住んでいた頃、当時のトルコ人家主に、日本ではクリスマスを祝うかと訊かれたことがあった。「なんとなく(祝う)」。そう煮え切らない返事をしたら、返ってきたのは、トルコでも同じだという答え。もちろん、キリスト教の祭典に起源があることに違いはないけれど、これだけ西洋世界の影響が強くなった現代では、クリスマスは今や宗教的な文脈を超えて、世界的な行事になった感がある。西洋の技術・文化の輸入にかけては歴史の長い日本はもちろん、イスラム世界の一部ですら、12月の25日は一年を構成する365日のうちのだたの一日という訳ではないらしく、この季節、冬休みの帰国のために過去にドバイやカタールで乗り継ぎした時には、空港はだいたいクリスマスムード一色だった。来年に予定してるエジプトでの病院実習の調整のためにメールで連絡を取っている現地のドクターですら、クリスマスの挨拶をしてくれたのには驚いたけど。

 

そう、エジプトでの病院実習。後先考えない衝動的な行動で一気に外堀を埋めて後に引けなくなる、という自分にありがちなパターンを今回も見事に踏襲した結果、こんなことになった。行き先は、シャルム・エル・シェイク。エジプト東部シナイ半島の南端に位置する、紅海に面したリゾート地である。そもそもの事の発端は、約二週間前。耳鼻咽喉科の試験を翌々日に控え、いつも通り現実逃避に精を出していた時にまで遡る。英語圏医学生によって運営されている某サイトで、シャルムにダイビング疾患を専門とした治療を行っている病院があることを知った。エジプト観光省管轄下の公的な病院であること、過去にそこで実習をした学生の口コミも何件かあったことから、信用できそうだと思い、病院の担当者にメール凸。来年二月頭頃の実習受け入れ可否を問い合わせた。まぁこういうのはだいたい返事こないパターンやろ、と高を括っていたら、二日後にはあっさり先方から快諾の旨返事が。困ったことになったと思いながら、気が付いたらその翌日にはロンドン経由のLCC航空便をクレカで購入していた。往復3万円。イタリア辺りで乗り継げばもっと安い便(1万円台から)がある模様だけど、色々フクザツなあいつ(ビザ)との関係でシェンゲン圏内での乗り継ぎができないため、この選択に落ち着いた。宿に関しては、病院敷地内の学生宿舎に一泊あたり15ユーロ(約2000円)で泊まれるらしい。高級リゾート地にこの値段で滞在できると思うと、高笑いが止まらないわね。あとはどうやって毎日病院を抜け出すか策を練るのみ。

 

そんなわけで、クリスマスだか何だか知らないけど、冬休みは元気に引きこもって在宅バイトに明け暮れる毎日を送っている。仕事の中身は、例によって身内の職場から流してもらっている翻訳。年末年始は大体いつも人手が必要みたい。季節労働ってわけ。でもせいぜいが時給1000円なので(哀しい学生バイトの性)、冬休み中ちょっとやそっと働いたところでエジプト実習の渡航・滞在に掛かる費用の全てを賄えるわけでもなく、残りは種々のへそくり(最後の一週間は適当に理由つけてバックレた去年の〇光義塾での講師バイト収入の残りなど)と年始の臨時収入(aka爺(おきな)からのお年玉)に頼るつもりである。

 

そう言えば、昨日はワルシャワ郊外にある友達パヴェウの実家に招待されて、クリスマスイブの夕食会に参加してきました。ポーランドではイブの夕食に肉を食べないのが伝統らしく、ダイニングテーブルの上に綺麗に並べられていたのは、何種類もの魚料理。なかでも鯉の燻製が本当に美味だった(魚が好きじゃないパヴェウは死んでたけど)。食事の後はプレゼントの時間で、恐縮なことに、この何処の馬の骨とも分からない日本人小娘のためにも、可愛らしい小包が用意されていた。中身は、栞とマグカップ。今回の冬休みは帰国叶わず、ポーランドで過ごす初めての年末年始になったけど、現地のクリスマスを体験する良い機会に恵まれて、本当に幸運だったと思う。

 

ちなみに、冒頭でクリスマスがいかに宗教的文脈を越えた行事として世界的に親しまれているかについて触れたけれど、皮肉なことに、キリスト教の本場ここヨーロッパでさえ、近年では主に一部の若者の間でクリスマスにおける宗教離れの潮流が生まれつつあるらしい。今週の火曜日、旧市街のカフェで、店内のクリスマスツリーが星を戴いていないことに気が付いた時、パヴェウからそんな話を聞いた。星の飾りはキリスト教を象徴するものだから、宗教色があるのを嫌う場合に、あえて付けない選択をする人もいるとのこと。ちなみに、パヴェウ家の居間のクリスマスツリーに星が付いていたかは、覚えていない。